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「沸き立つ湯」のひみつ


なにかを計画・思案している場面では、しばしば沸き立つ湯の湯気が映される。
水开得越热滚滚(re4 gun3gun3),人家想得越糊涂。

「滚!」はたびたび使われる「出ていけ馬鹿!」という罵り。
湯がぐつぐつと煮えたぎるほど、「出ていけ馬鹿!」加減も高まるという指標。
個々の事例の提示はちょっと時間がかかります。
细水长流(xi4 shui3 chang2 liu2)


「脱帽」「かんざし」のひみつ

▼12集
白雲飛に会う安寧公主は、文媚儿から髪飾りと腕輪も挿してもらう。

及笄(ji2 ji1)
髪をかきあげる笄(こうがい)を挿す年頃になる。成人する。

ところがこの髪飾りは独占欲と嫉妬心の強い文媚儿のものだったので、安寧公主もこの影響を受けて成長する。白雲飛から小龍蝦を大事に思っていると聞かされた安寧公主は、小龍蝦を捕獲する。

▼13集
小龍蝦は安寧公主に捕まえられて皇宮に来、皇上朱允に助けを求める。
朱允は小龍蝦の帽子を取って、彼女が大将軍の娘司徒静で、自分と白雲飛の義兄弟であることを明かす。

小龍蝦はここまで騒々しくふざけていて皇上と同じ壇上にまで上がってしまうが、帽子を取られて、すっかりおとなしくなる。
(このシーンは、まさに朱允が小龍蝦を男の子から女の子に脱皮させるシーン。
すでに小龍蝦の衣装は、最初の固い紫の上着にズボンではなく、薄い生地の緑の上着に袴となっている。
この後、小龍蝦としての力は衰える。文薔・剣南の結婚に向けて彼女自身が起こした行動の成果は・・・。)

いかにも騒々しいワルガキ、の小龍蝦ですが、


皇上朱允に帽子を取ってもらったら・・・


こんなにかわいくおとなしい司徒静になりました。


脱帽(tuo1 mao4)致敬 zhi4 jing4)
脱帽して敬意を表す。

脱帽致静(jing4)
脱帽して静かになる。脱帽して司徒静になる。


化名(仮名)のひみつ



▼3集
小龍蝦、白玉、尹框の名乗りの場面から。


こういうシーンは、吹き替えにしても字幕にしても難しそう。
だいたい説明しにくい字だ・・・尹框って。

最初に朱允は「毒壁虎(毒イモリ)」 白雲飛は「血蜘蛛」と名乗るが、
「そんなのでたらめだからダメだ!」と小龍蝦に却下される。

朱允が「白虎」である白雲飛の「虎」を含む「毒壁虎」で、
白雲飛が「朱雀」である朱允の「朱」を含む「血蜘蛛」だと、
陰陽五行の世界でつじつまが合わなくなるから。


●白雲飛⇒白玉
白云飞: 在下姓白,名玉。黑白的白,美玉的玉。
「姓は白、名は玉。白黒の白に、美しい玉の玉だ。」

「黑白,美玉」には「善悪、美人」の意味を含んでいるが、
同じような意味のことを言うにも朱允は「秋水伊人 匡扶正义(涼やかな人、正義を助ける)」なのだから、
ほんと、朱允の頭のキレに太刀打ちするのはたいへん。


小龙虾: (笑)什么美玉红粉的。娘娘腔。你一个大男人,还不叫“白娇娘”算了。
「なにが美人紅さすだ。お嬢さんかよ。男だったらむしろきれいな生娘だろう」
(このせりふの「叫」は、「白嬌娘という名だ」というより「白嬌娘を呼ぶ」という意味で使われていると思う。小龍蝦・・・この頃はほんとチンピラだ。)

「白娇娘」って
最初よく分からなかったけど、「生娘」のことである。
「白地(手付かずの土地)」のように「白」には「何も加えない、そのままの、処女の」の意味がある。

小龍蝦、ぽんぽん突っ込む。小龍蝦に完全に負けている白雲飛。
それに笑ってしまう朱允。笑いのツボが合うようだ。

小龍蝦、朱允に向かって
「彼が生娘の白玉で、お前はキズモノの彩霞(朝焼けの赤く染まった雲)じゃあないだろうな。」
朱允が一瞬ひいてますョ。。。


●朱允⇒尹框
それで、朱允の名乗り。

朱允: 我叫尹框。秋水伊人的伊傍边去掉个人,
这个匡扶正义的匡,在家个木头边啊。
「俺は尹框。「秋水伊人」の「伊」から人べんを取って、「匡扶正义」の「匡」に木へんを付ける。」

「秋水伊人 匡扶正义(涼やかな人、正義を助ける)」
と、小龙虾の行動をたたえながら、
「去掉个人、再加个木头边」
とは、涼やかな「不是人(人でなし)」に「木头(木っ端)」をくれてやる
なんてことばが、背後に隠れてるようにも聞こえる。

匡に木を加えて、というところは、「独木不成林,我来加个木头」
そんな気持ちの表れかも。。。

自分は「君」たるに口足らずな「尹」、
「木头人(朴念仁)」 ならぬ木头王「框」
という皇上の自虐的な思いもあるような。。。

小龍蝦もどこから突っ込んでいいかわからないので、
耄无创意,淡而无味。
つまんない名前!と岩から降りてしまう。この勝負、朱允の勝ち。


二人の名前は
白玉: 白与(いたずらに与える)、白欲(いたずらに欲す)
尹框: 阴诓(陰で騙す)、阴匡 (陰で支える) 
の音に通じ、彼女に対する態度や行動を暗示するようにも感じられる。


●「順口」な小龍蝦

朱允に「小龍蝦も本当の名前じゃないだろう?」と言われて
小龍蝦は「もともと"龍少侠"だったけど、こんなふうにおっかないから、人が"少"の字を取っちゃった。それで"龍蝦"になったんだ」と説明する。

朱允「小龍蝦のほうが龍少侠よりずっとごろがいいな」
白雲飛「この小龍蝦は食ったらわりと口当たりがいいぞ」
「ごろがいい」も「口当たりがいい」も「顺口(shun4 kou3)」。
小龍蝦自身の口ぶりは「順口」のもうひとつの意味「口から出任せ」のようで、
朱允の突っ込みは「小龍蝦のほうがよっぽどでまかせだな。」にも聞こえる。

「でまかせ」荒業の小龍蝦、「語呂」で巧みにこねくり回す朱允、「味覚・本能」で食らいつく白雲飛。
こんなところにも三人の行動・思考傾向の一端が表れる。

参照:
化名(仮名)から見る成長の鍵


化名(仮名)から見る成長の鍵

「刁蛮公主」は、仮の名の「現在の姿」から本名の「本来の姿」になっていくまでの三人の成長物語が軸である、といえる。


いくつもの問題に憂いていた朱允は真の皇帝として独り立ちし、 素朴な善心のあるチンピラとして自分を生かしていた司徒静は冷静な判断のできる一人の女性となり、利己的だった白云飞は一人前の男として動き出す。

その鍵を握るのはそれぞれの名前である。



▼司徒静と小龍蝦が全く異なる名前であるように、沈着冷静な司徒静と豪胆活発な小龍蝦は姿や性格も全く違う人格である。
小龍蝦が「司徒静」という「一人の女性」としての人格になるには、いくつもの脱皮を経なくてはいけない。

小龙虾:本来我叫龙少侠,你看,我这么威猛就知道了,可人们偏把那个少字去掉了。所以剩下龙虾了。
もともとの仮名は「龍少侠」だったという。「少」が取られて「龍侠」、転じて「龍蝦」になり、上に「小」を改めて付けたのだと。

小龍蝦の名が人によって作られたなら、その名を捨てるのも、本人の意思ではない力を借りなくてはならない。その命名そのものがでたらめでまかせゆえ、荒唐無稽で破滅的なイニシエーションを経なければならない。その過程は命がけである。何度死線を踏んでいることか。本人だけでなく、周りの人の命まで巻き込んでの大変身である。
(視聴者からすると、最初の痛快な小龍蝦の印象が強すぎるので、司徒静になっていくスピードについていけないところもあるのだが・・・)


▼皇上朱允は、「君」の字を分解した「尹框」を自分で名乗る。
この名前からは一見「君」は見えてこない。「尹框」としての彼は、皇上の視点を忘れずに行動するが、「混混づきあい」の面から見ると、友達を裏切るし利用するし非情である。(ろくでなしという点では「りっぱな混混」ともいえるが。)
未完成な「尹」に「口」を付け、「框」から「木」と「匚」を取ることで、「君王」になる。
彼はなにを得て、なにを外していくべきか。
手の込んだ仮の名を組みなおしていくのもまた、自分の努力であり、手の込んだ方法である。

また、朱允の「允」の字は、「充」に足りない。
朱が充つるには、なべぶたが要る。それは、小龙虾の「龙」の字にある「ヽ」と「一」である。
(小龍蝦の「龙」の字から 「ノ」を九連環に振り下ろし、「ヽ」と「一」を朱允に与えると、「龙」の字から残るのは「儿」だけである。最後の場面で司徒静が子どもっぽくなってしまうのは、「小儿」になってしまうから。
それで「虾(蝦)」はどこにいったかというと、安寧公主と司徒静に食べられていた。)



▼さて、雲南国王子白雲飛である。
「皇」に通じる「白王」(白の下に王を置くと「皇」になる。だから、朱允は雲南王に脅威を抱くのだ。)
の「王」には一つ多い「ヽ」の多い「白玉」。朱允が白雲飛を「普通の人ではない」と見なすのも道理である。
このひとつの点「ヽ」は彼のかたくなな心だろう。
これを手放したとき、彼は雲南王たる資格を得る。
(「ヽ」は、消失するのではなく、違うところにいくのだがそれはまた別記。)

しかし、小龍蝦にその名を「白嬌娘」とからかわれたように、女の子のように純情すぎる。仮名と本名が姓の白で通じるように、彼の性質は一貫しているが、その一貫性が本来求められる方向とは違うのである。もう、あさってしあさってよりはるかかなたの方向を向いているのだ。その方向を修正したとき、「男子汉」一人前の男になる。
上の二人に比べると、非常にシンプルなはずなのだが、いかんせん、堅固な「玉」なので変化に時間がかかる。





九連環を解く人は



▼2集

朱允は悟性大師から授かった九連環をもてあそぶ。
これを最も簡単な方法で解くことができた人が自分の貴人となり、難局難題を解決する手助けとなるだろう、 と言われたのだ。九連環は、「ちえのわ」のこと。
小龍蝦は、白雲飛の刀で九連環を割る。
「世の中には助けなきゃいけない人も解決しなきゃ行けない問題もたくさんあるのに、なんでこんなのに時間を無駄にするのさ! 九連環は完全に分かれただろう?」
小龍蝦は皇帝の悩みを言い当て、その解決方法もすらすらと述べる。
朱允は、この人こそが自分の貴人だ、と感服する。

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ここから物語はいよいよ動き出すが、
九連環を解けるのは、この物語世界で小龍蝦しかいなかった。
直感的に行動するから、主人公だから・・・まー、そうだけど、
文字の魔力から読み解くと・・・。

「九」は「龍」の象形に似ていることもあって縁起がよいとされている。
なるほど、「九」と「龙」はよく似ている。

九连环に刀を振り下ろす・・・
「九」に「ノ」を差し込むと「龙」にそっくりである。

でも「龙」には「ヽ(点)」がある、その点はどこからもってくるの?
点は、「环」の王へんの一画目を持ってくる。

「九」に「ノ(かたな)」と「ヽ(点)」を加え、「龙连环」に・・・
いやいや、「环」は一画目を失ったので「坏」となった

龙连坏。
龍が悪に連なる。

小龍蝦はひとつひとつの問題を解決していくけれど、その一方で別の問題も引き起こす。
(小龍蝦の「龙」 は「ノ」 を失ったので、「不完全な龍」となり、このあとの小龍蝦の行動は、なにかと不完全。
捕まったり、ほかの人を巻き添えにしたり。 この文字の形の変化の話はまた別記。

小龍蝦が問題なく自分の意図を全うできたのは、九連環以前の「イカサマ賭博でもうけた金を難民に分ける」「万人敵を斉国候の賭場から助け出す」、だけである。「万人敵が盗んだ白雲飛の荷物を巻き上げる」はうまくいったようで、やはり白雲飛と打ち合いになってしまうし・・・。これは、腕飾りの呪いである。その話も別記。)


完全に分かれてしまった九連環を、ひとつひとつの九つの環に戻していくのは、朱允の役目。
彼は「坏」 を「怀」に変えていく。


そして、彼の小龍蝦もとい司徒静への想いも変わっていくのである。